今日は敬老の日。
長く仕事を続けてきた方に感謝する日ですが、ふと自分のことを考えてみると、私もこの会社に入って26年になります。
社内でも年齢は、若い方から数えるより上から数えた方が早くなりました。
自分ではそこまでベテランになったつもりもないのですが、昔のように教えてもらうばかりではなく、教える側に回ることも増えています。
今日はそんなことから、技術を残すことについて少し考えました。
今できていることが、ずっとできるとは限らない
ものづくりの仕事をしていると、
「これはこの人に聞けば分かる」
「この作業はこの人ならできる」
ということが、どうしても出てきます。
長くやっているからこそ分かることもありますし、パターンでもグレーディングでも縫製でも、全部を数字や文章にできるわけではありません。
素材を見た時の感覚だったり、縫い上がりを見た時の違和感だったり。
グレーディングでも、ただ数値通りに動かせばいいわけではなく、アイテムやパターンを見ながら考えることがあります。
そういう部分は、やはり経験が大きい。
ただ、その仕事が一人にしか分からない状態になると話は少し変わります。
一番怖いのは、今普通に回っていると、その問題に気づきにくいことです。
毎日できている。
納期にも間に合っている。
特に問題も起きていない。
そうなると、どうしても目の前の仕事が優先になります。
でも、何かのきっかけで今まで当たり前にできていたことができなくなった時、
「これ、誰ができる?」
となる。
その時から教え始めても、すぐに引き継げるものばかりではありません。
技術を残すにも余裕がいる
では早いうちから人を育てて、仕事を標準化して、マニュアルを作ればいい。
言葉にすると簡単です。
実際の中小企業では、なかなかそうはいきません。
教えている間も仕事は入ってきますし、教える側の手も止まります。
新しい設備を入れるにもお金がかかる。
仕事のやり方を整理したり、デジタル化したりするにも時間が必要です。
私も今、社内の仕事を少しずつデジタル化したり、自動化したりしていますが、「やった方がいい」と分かっているものほど、日々の仕事に追われると後回しになりがちです。
結局、技術を残すにも会社側の余裕がいります。
人を育てる時間。
仕組みを作る時間。
失敗できる余裕。
そこにお金を使えるだけの体力。
この辺りがないと、分かっていてもなかなか手を付けられません。
グレーディングだけだった会社から
弊社も、最初から今のような仕事をしていたわけではありません。
もともとはグレーディングを中心とした会社でした。
私自身もグレーディングから仕事を始めています。
そこから少しずつ仕事の幅を広げてきました。
パターン作成。
サンプル縫製。
裁断。
一度に全部始めたわけではありません。
お客様から相談を受けたり、仕事をしている中で「ここまでできた方がいいな」というものを一つずつ増やしてきました。

今では、パターンからグレーディング、サンプル縫製、裁断まで一連の流れで相談をいただくこともあります。
全部を自社だけで完結させることが正解だとも思っていません。
自分たちより得意な会社や職人さんがいるなら、お願いした方がいいこともあります。
ただ、自分の担当工程だけしか分からないのと、その前後で何が起きているか分かっているのとでは、仕事の見え方はかなり変わります。
できる仕事を増やしてきた理由
仕事の幅を広げてきた理由は、一つではありません。
お客様からの要望もありましたし、会社として収益の柱を増やしたいという部分もあります。
一つの仕事だけでずっと会社を支えられるとは限りません。
それは26年働いてきて、以前より強く感じるようになりました。
ただ、何でもやればいいという話でもありません。
無理に仕事を増やして、本来得意だった仕事の品質が落ちたら意味がない。
できることを少しずつ増やす。
自社でやるものと、外部にお願いするものを分ける。
その上で、お客様から相談された時に前後を含めて話ができる。
弊社が目指してきたのは、どちらかというとこちらに近いと思います。


こうして仕事の幅を持つことは、単純に売上を増やすためだけでもありません。
一つの仕事が減った時に別の仕事がある。
ある部署が忙しければ、前後の工程を見ながら調整できる。
そういう会社の余裕が少しでもあれば、人を育てたり、新しいことに取り組んだりする時間にもつながります。
技術継承も、結局こういうところと無関係ではないと思っています。
これからは「自分がいなくてもできる」を増やす
26年前は、自分が仕事を覚えることで精一杯でした。
できなかったことができるようになるのが面白かったですし、今でも新しいことを覚えるのは好きです。
ただ、立場も年齢も変わってきました。
今は「自分ができることを増やす」だけではなく、
「自分がいなくてもできることを増やす」
ことも考えないといけないと思っています。
自分が覚えてきたことを若い人に渡す。
人によってやり方が違う仕事を整理する。
機械やシステムに任せられるところは任せる。
逆に、人が判断した方がいいところは無理に自動化しない。
全部を一気に変えることはできません。
日々の仕事をしながら、一つずつです。
敬老の日に自分の社歴を数えてみたら、いつの間にか26年。
まだ引退を考えるような年齢ではありませんが、教えてもらう側だった自分も、少しずつ次へ渡す側になっているんだなと。
今日はそんなことを考えました。